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Subject: 「ヤンプ・コルト(音楽家) 〜往復書簡〜 福地(茶会記)」
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photo by Katsuhide Morimoto

福地:
ヤンプ・コルトさんとの出会いは3,4年前でしたか?
近所の新宿区荒木町にある仲間の店「私の隠れ家」でお会いした記憶があります
その後、茶会記で月一度やっている上原英里さんのライブを観に来て下さいました。

ヤンプ・コルト(以下ヤンプ):
はい。その日は友達と「直感力を磨くゲーム」をしていて笑、
当時、荒木町は随分と様変わりしていて、新しいお店がどんどん出来ていたので、
とにかく荒木町中の全ての新しいお店の前に行って「ここだ!」という店にのみ入る、
という、ま、馬鹿馬鹿しいんですけど笑、
でも、何と言うか、何の情報も無く、店構えオンリーで、
自分に合った店を、自分自身の直感で見つける、
もし外したら自腹でガッカリ、って、大事な気がするんです。
で、「私の隠れ家」のランチの写真を見て、これは絶対ここの店主本人が撮った写真で、
多分女性で、ウソがつけない人だから面白いはずだ」と、勝手に決めつけて笑、
雑居ビルの2階に登ってみたら、蓄音機でSP盤を聴かせてくれて、
ご飯も美味いし、フェアトレードのコーヒーも美味くて、
初日で常連になってしまいました。
その店主さんに「茶会記さんて素敵なお店ですよ」と言われたのだから、
行ってみたわけです。

福地:
喫茶茶会記の月一回演奏されているアルゼンチンタンゴとシャンソンの弾き語り
上原英里さんのライブにお越しになりました。
喫茶茶会記ではカフェルームとライブスペースがわかれていてお客様の
入場の際にはカフェルームとライブスペースを同じ音源で鳴らしているのですが
ライブ中、カフェルームにある音源のセレクターがそのままになっていて
ボリュームがゼロなのにライブスペースでかすかに鳴っていて
そのことをヤンプさんはカフェルームの私に伝えてきてくれて助かりました。
「この人はただものじゃないな、どんな人かな?」と興味が湧きましたよ 笑


ヤンプ:
あ〜〜〜、思い出しました笑。そうでした、そんな事がありましたね。
茶会記には、そこら辺にヴィンテージのアルテックやら、B&Wやらスピーカーが置いてあって、
せっかくなのにもったいないな、と思って、つい笑。
素敵な空間ですよね、茶会記。
上原さんも素敵だったな。


(話の中のアルゼンチンタンゴ弾き語り〜上原英里さん/live at 茶会記)


福地:
初めに2,3屈託なく質問しますけどいいですか?

上原英里さんのライブにお越しになりましたが
英里さんのオールドファッションドなテイストとヤンプ・コルトさんの先鋭的なイメージ
が似つかわしくないのですが、とりあえずお越しになったという感じでしょうか?
もしくは英里さんと「私の隠れ家」でお会いになったとか。

ヤンプ:
全然関係ないんですけど、僕、ツイッターとかやってないんですよ。
なんでかって言うと、一つには、話が長いから笑。
ひとつひとつマジメに答えると笑、
僕はあんまり、上原さんの事をオールドファッションだと思ってないんです。
上手くは説明出来ないけど、「新しい」とか「古い」っていう概念の外側に居る人、って感じ。
そういう人、歌、音楽、好きです、きっと。
で、「私の隠れ家」での世間話の中で絶賛されてて、プライベートで録音されてた音源を店の中だけで聴く事が出来たんです。
素晴らしかったから、生を見たくて、そしたら茶会記さんでライヴがあったので丁度良いタイミングだと感じて、行きました。
お店には、ちょっとびっくりしましたよ。「ここに、これか〜」みたいな感じで。


福地:
なるほど、わたしなんかはカミニートなんか聴くといい意味での前時代性を感じますが
ヤンプさんは今沖縄にお住まいです、
どのような動機でそちらに向かわれましたか?

ヤンプ:
2009年〜2010年頃、出来れば鎌倉とかの方に引越を考えていました。
でも、様々な事情で棚上げになっていて。
なんか、いろんな事に対して、飽和気分、というか、そんな感じもありました、が、
前向きに「どこであれ、行きたい所に行く」というイメージも持っていました。
沖縄は、復帰直後に行ったんです。小学校の2年かな、父の仕事で。
当時、衝撃でしたよ、沖縄。
58号線の看板、全部英語だし。アメ車がほとんどで。
そしてあの何とも言えない湿度とか、空気感。
その後も数回行って。
中でも良く憶えているのが、糸満小型船舶造船所に行った時です。20歳前後かな。
東京の大学の教授なんですけど、糸満で、実際にハーリーやサバニを造っていて、
「造って」っていうのは「発注して」って意味ですけど、
研究の一環だったのかな、御縁があって、くっついて行ったんです。
ハーリーやサバニって、オールで漕ぐ沖縄式の船で、当然エンジンも無いです。
かつては、それで台湾〜フィリピン〜インドネシアと交易をしていたらしくて。
船の研究家にとっては、とても興味深い船形のようで、
それこそ、今では交易には使われていない古い手漕ぎの船が、現代の研究者からしても、
「先鋭的」なものに映るみたいです。惹かれますよね。
で、そこでの糸満の日々も、また衝撃で。
ハーリー大会っていうのが、糸満の港であるんですけど、熱気もスゴくて。
おばあ達が、パーランクー、だったかな、手で持つ小さな太鼓があるんですけど、
ホースを短く切って、それで太鼓を全員で叩くんですよ。
全員だとスゴい音!!東京に帰って、すぐにホース買いました笑。
それとか、港にアヒルを放して、小学生達が泳いで捕まえたら家に持って帰って良いんです。
で、メインイベントのハーリーの大会は、本当に全員が真剣で。顔つきが違いました。
今は分からないけど、当時はそこに観光客なんて1人もいなくて。少し自分が場違いでした。
夕方になったら、海辺の造船所の駐車場で、でっかい鍋で地鶏と冬瓜を煮込んで、
みんなどこからともなく現れて、泡盛をひとしきり飲んだら、
グループに1人は必ず三線の名人がいて、ガンガン弾き出すんです。
そしたらみんなで踊り出して。
「僕も試しに弾きたいです」と言うと、
「今日初めて触って弾けるわけがない、僕は何十年も触ってるけど弾けないよ」と言われながら、
何となく弾いてみたら、みんな踊り出して。
正直、全てに感動しましたよ。
自然に頭に「豊」っていう漢字が浮かんで、今でもその文字が頭に貼り付いてます。
「豊かさ、って、いったい、何だ?」って思いました。
僕は新宿に産まれて、新宿に育って、三代目の江戸っ子で、新宿が好きで、
どこに行っても、その事に疑問に思った事が無かったのかもしれません。
その時「人生の中で、いつか沖縄に住もう」と思いました。
ね、、、話が長いでしょ笑。


福地:
震災等の事もあったと思いますし。


ヤンプ:
はい。当時の新宿の家の水のタンクが完全に壊れて、家が水浸しになりました。
スタジオではヴィンテージのアナログ・シンセが、電源ケーブルで辛うじて宙ぶらりんになっていて。
あの時は、CD「yes」の発売の10日ほど前だし、
翌日の3/12は、東京都現代美術館で、僕と市川創太で開発したマルチ8チャンネル・アウトのソフトを使った、
UAとのライヴの予定で、自分のスタジオでそれの準備中で、もう何が何やら、でしたね。
その時は家の復旧で手一杯で。
で、気が付いたら原発が4つ爆発していて、一旦は西に行かなくては、と思いました。



福地:
ヤンプさんがプロデュースされたUAさんからのインスパイアもあったのでしょうか?


ヤンプ:
UAは先に沖縄に行っていたし、もちろんインスパイアはありました。
具体的な知り合いは、UAと、ギターの青柳君だけだったし。
二人を訪ねる以外に選択肢はありませんでした。
特に、当時、身籠っていたにもかかわらず、自宅に一週間泊めさせてくれたUAと家族に感謝しています。


福地: 地方で活躍することってとても今後の日本にとっても重要なテーマであると思っていますが。


ヤンプ:
「活躍」って言われると荷が重くなっちゃうけど笑、
音楽「活動」ね笑。
「地方で」っていうのは、正直ピンと来ないけど、
「どこでだってやれる」っていう気持ちはあります。
ここは短く笑。
ツイッター出来るかな笑?


福地: どんなところでもやれる人はかっこいいけれど
どんなこともやる店って
軸のない店だとも思われています。
  だからいろいろと堅苦しくなるわけでございます。 笑

ヤンプ:
好き勝手にやるのが一番ですよ。
僕も「何でもやるから何だか分からない」の典型らしいです笑。


福地:
ヤンプさんは表現形態が多岐に渡るので茶会記として整合性がとれやすいのです。
真剣にひとつことに集中している凄い方々がいて各分野にいらっしゃるので、いろいろと分類的な発言を
してしまうんですね。「何々一派」とか「ファインアート傾向」とか「中央-地方」とかね!
なんか事務的に分類しているように思われる節もあるのです。
分類は結構よくないけれど、分類していないと概ね無意識的に自己本位のサークル的な寄り合いになっちゃう傾向が
あるのですね。それがいいだろといわれればそれまでですが、多分店は閉塞していると思います。
それだから、茶会記の嗜好(ジャズ喫茶)とは違っているように思える意味でのヤンプ・コルトさんの魅力との
化学反応を期待しています。
とはいえフリージャズ系の旗手の一人である、わたしと同じ学年の吉田隆一君にいわせると
「福地君、セメタリー・レコーズ扱っているのはかっこいいね」的なことを言われました。
彼もヤンプさんもジャンルを越えているんですね。
しかし、例えば和芸系の仲間達とはリアルに別の地平に立脚しているので
すこしずつそのような障壁を破る戦略を練りたいと考えています。


ヤンプ:
一気に話が難しくなったね笑。太鼓をホースで叩くおばあの話をしてたのに笑。

半分は、分かります。演奏する側だと、本当に分類は嫌です。
でも、友達と車に乗ってる時はカーステで「やっぱり70's ソウル、ヤバいね!」とか言ってますからね笑。

吉田さん、一度だけお会いした気が、、、電話だっけな、、、間違ってたらごめんなさい。
そう言ってもらえると嬉しいですね。10年間、レーベルをやった甲斐があります。

「店は閉塞している」っていうのは、茶会記の事?
え?「ジャズ喫茶」だったの?知らなかった。。。
あ、さっき、「綜合藝術茶房」って言わなかったっけ?


福地: 実はジャズ喫茶なのであります。笑
今でもジャズ守旧派!そんな意識ですね実は。


ヤンプ:
また分類してるじゃないですか笑。


福地:
ジャズという概念は「変容」も加味されるものなので
守るものと攻めるものの鬩ぎ合いというか。


ヤンプ:
ニューヨークとかで、ジャズとヒップが一致してた頃、つまり、ジャズこそが、最もオシャレで、カッコよくて、売れてた、
だから50〜60年代かな、「I jazz you」みたいなスラングがあったらしいですよ、聞いた話だけど。
そもそもジャズこそ分類を嫌うじゃないですか笑。
まあ、「ジャズ」という言葉も分類だけど笑。
僕はイキ切った演奏も好きだし、甘い甘いスタンダードも好きです。
あそっか、甘い甘い方にイキ切ってるのかな。
ジャズって、音楽の辺境にガツガツ入り込んで行くのに、「カッコいい」という評判を得なきゃいけなくて、
でも、なんであれ、そんな音楽好きかも知れません。


福地:
ジャズ喫茶を博物館的に追っていくと閉塞してしまうということです。

んー話がわたしのおかげで胡散臭くなりましたね すいません

これからは
ヤンプ・コルトさんの過去作品の私のインプレションを投げかけさせていただいて
いろいろとご回答をいただいて、最終的に太鼓をホースで叩くおばあに帰結させたいと思います。笑
結構、都市性をヤンプさんから享受していましたが
もっと深いなにかを音の感想から少しでも迫れればと考えています。

(お客様お越しになったので中座 笑)

ヤンプ:
あ、「お客様お越しになったので中座」、リアルでいいですね笑。





福地:
ヤンプさんのディスクを聴くと
すべての音楽ジャンルが詰まった先端系フレッシュジュース的な印象が先に立ちます。


ヤンプ:
フレッシュジュース、って言われた事はないです、嬉しいです。
あんまり関係ないですけど、ホント、フルーツ好きです笑。
なんか、フルーツって「食後」とか「デザート」ってイメージがあるじゃないですか。
でも、なんかしっくり来なくて、食前に食べてたんですよ。
そしたら、ローフードに詳しい人に言わすと、食前で良いらしいですね。
沖縄に来て最高の事のひとつは、マンゴが安くてメチャ美味い事です。
コッポラの地獄の黙示録で、マーロン・ブランドが1ヶ月くらい現場に遅刻して来て笑、
しかも太っていて笑、しかたないからコッポラは「カーツはマンゴを食べ過ぎた」という設定にしたそうなんですけど、
カーツになりかけるほど食べました笑。
また余談ですが、マンゴは漆科に属しているらしく、食べ過ぎるとアレルギーを起こすらしくて、
ほどほどにしないと、人生のお楽しみが減ります。


福地:
深く踏み込むと
他のアーティストにない隠れ味は内省的なファンタジー性であり
「絵のクイーン 張り子のキング」の挿絵がちょこちょこ見えてくるような
物語の世界ですね


ヤンプ:
「挿絵がちょこちょこ見えてくるような」って嬉しいですね。
このPVのアドレス、送りましたっけ?

自分で油絵描いて、写真に撮って、編集、監督したんです。是非見て下さい。
「挿絵がちょこちょこ見えてくるような」感じ、でしょ?


福地:
何度も見ましたよ!
そのようなベースがあるので時に
真正とも思えるハードな完全即興も時に散りばめられていますが
男気的でお客様が少ないフリージャズのイメージには
ならずドレッシーで女性にも響くようなテイストです


ヤンプ:
男と女が居たら、何が起きても絶対に男が悪いですからね笑。
女性に響かないと笑。
でも、僕本人は、演奏してるときは、何も考えていないんです。

福地:
わかります。そうじゃないと感性に響かないかも
先ほど申したのは
わたし独自の感想なので普遍的でもなくて恐縮ですが
先の雰囲気を念想しながら聴くとかなりはまると思います。

ヤンプ:
独自の感想を言って頂けるのが一番嬉しいです。


福地:
アルバム単位ではこんな印象かな

「gold leaf」は、yamp koltさんの全体像を俯瞰する一枚
中村屋のカレー的質感(笑)でこの一枚!って感じですね

ヤンプ:
新宿の? あ、、、一回だけ食べたはず。美味かった記憶が。。。

福地:
ジャケと音の整合性がバッチリなんですね

ヤンプ:
それも嬉しいです。自分で出すアルバムですから、「ジャケと音」も自分に課しているハードルのひとつです笑。
僕のレーベルの全てのジャケは、自分でデザインするか、しなくてもディレクションは必ずしてます。
なんか、、、そうせずにはいれない笑、って感じです。
ジャケの写真は長岡市からの花火大会の一般公募で、デザインは永戸鉄也と僕です。


福地:
別段フィールドレコーディングしているわけじゃないですが 笑

ヤンプ: いやいやいやいや!!!
これ、長岡の花火を本当に録ってるんですよ!
で、一緒に演奏してる曲もあります。
えっと、話すと長くなりますが、
一曲目の一十三十一ちゃんに歌ってもらった「She's My Baby」だけは、花火をサンプリングして曲に合わせてますが、 他は「まず花火ありき」です。
最初は「花火と演奏、全同録」を考えていたんですけど、
僕は新宿生まれで、花火と言えば隅田川、って感じで、
隅田川って第一会場と第二会場と二カ所から順番にどんどん花火が上がっていって、
あんまり解説とか聞こえないじゃないですか。
でも、長岡の花火は1発ごとに、大きな音で解説が入っちゃうんですよ。
なので「全曲同録は不可能」って判断して、
で、後で録音された解説部分だけカットしてから、全部を聴いてみて、
「花火が演奏してる」って感じた部分、
4分〜10分くらいだと、箇所によってはまるで演奏に聴こえて、
で、それに対してアプローチしていった、って感じです。
朝崎郁恵さんの「今ぬ風雲」の場合は、
「花火と歌ってほしいんです」と伝えて、花火を同時に聴く事も無くイメージだけで独唱してもらって、
それから花火の音と独唱を同時に流してみたら、バッチリで、
朝崎さんもそれを聴きながら「花火と唄が喜び合ってる」っておっしゃってくれて、嬉しかったのを憶えてます。
「太陽ぬ落てぃまぐれ」は、以前にバリ島で、
虫の音をリズムにしてバリ・ガムランの「スダマニ」のメンバーと録音した演奏をそのままにしていたのを思い出して、
せえの、で一緒に流してみたら唄とkeyが偶然バッチリだったり。
僕のベースや、大きなバネで自作した楽器も、現場で野外で録りました。
一曲一曲違うアプローチがあるので話すとキリが無くなりますが、
思いっきり「フィールドレコーディング」です。
そこは伝わって欲しかったな。
日々精進します、適当にテキトーに。


福地: かっこいいな そんな背景があったなんて
なにもコンセプトわからないのによかったですからね
もっと好きになりそうです。

真夜中の車の中とかもいいかもなディスクは
「far」 加速(私でいうならればバイク)から幻想的な無重力空間に行きますね
ロードムービー的


ヤンプ:
バイカーだったんですね。
「far」に関しては、聴いてたら事故りそうですけど。。。
なんでか、って言うと、当時、寝付きがあまりにも悪くて、
それで、自分にとっての「睡眠導入曲集」って感じでもあるアルバムなので、、、真夜中のバイク、か。。。寝ないで下さいね。
「ロードムービー」に限らず、映像的、って言われるのは嬉しいです。
映像がなくても映像が喚起出来るのはいいですね。
やはり、演奏する時に、頭の中には映像が付き物です。


福地: 「Hanger-on-off-kingdom」では
誰も知らない世界を〜ブラックホールを旅しているような感じでしょうか



ヤンプ:
これは、ロンドンのアラブ人街で、フィールドレコーディングをしながら、ベースも弾いたりして、
まとめて聴いてみたら「アルバムになってるな」って思ってリリースしたアルバムです。
自分でも「良くわからない何か」が聴こえて来て、
でも、暖かみとか、ポップさも感じたし、
「わからない、という何か」をリリースする事の大切さを実感したアルバムです。
「ロンドンのアラブ人街」は「誰も知らないブラックホール」だったのかな笑。
生の杏と、オクラがやたらと美味かったのを憶えてます。


福地:
「yes」はやっぱり、「絵のクイーン 張り子のキング」を軸にいろいろと考えてます 笑
若いお客さんに聴かせるとふっとジャケットみてくれたりします


ヤンプ:
「絵のクイーン 張り子のキング」は、アルバム「far」の
「Fake Queen, Empty king」の歌ヴァージョンです。
実は、元々は歌詞があった歌モノの曲だったんですけど、当時歌う
人に出会ってなくて、
考えたら、これの録音の前後でUAに出会ったのかな、映画館で。
僕は既にUAの事は好きでしたが、UAも僕がインドネシアの山で
録音している事とかを知っていてくれて。
のちに「Fake Queen, Empty king」を聴いたら「これで歌いたい」
って言ってくれて、感激しました。
元々「歌ありき」だったので、UAと録音出来て嬉しかったです。
このアルバムにも、それぞれの曲にいろんな「何か」があって。


福地: 「dance on white」はアート色が強くて
ギャラリーにいる気分になります

'90年代のリッチなアートシーンを喚起します
硬派ニューロマンティック的風合


ヤンプ:
福地さんのこういう表現、「福地節」で面白いですよね。


福地:
山口小夜子さんのクレジットがありますがコラボレーションなのですか?
凄いですね


ヤンプ: 本当にお世話になりました。
沢山の大切な事を教えて頂いた気がします。
「気がする」って、とっても大事な事ですよね。
仲良くさせてもらいました。大先輩であり、大切な友人です。
僕の事を「ケンカ友達」と言ってたらしいですけど笑。
何から書いて良いのやら。

さよこさん、実は天国へ行かれる前に、
字を「『山口さよこ』にしたい」って言ってて、
「全ては無理かもしれないけど、舞さん(当時僕は「藤乃家 舞」というアダ名をそのまま名乗っていたので)
 の作品やイベントでは『さよこ』にしてね」って。
それを聞いていたのに、僕のイベントに出演してくれた時、、、
その時は、機織り機とミシンにマイクを付けて音を増幅させて、
僕の曲とミックス(さよこさん本人が実際にDJをやって)しながら、
いわゆる「鶴の恩返し」を朗読する、というものだったんですけど、
で、フライヤーのデザインも僕がしたんですけど、
「山口小夜子」って漢字のまま書いちゃって。
正直、僕にとってはあまりにも「山口小夜子」だったので、自然にそう書いてしまって、
後から「次から、さよこ、にしてね」って言われて「あっ」と思って、その時も謝ったけど。
でも、次が無かったので。いわゆる「後悔」ですね。

なので、今後は「さよこさん」って書きます。

もちろん、あまりにも著名な方なので、子供の頃からCM、CFなどでも当然知っていましたが、
僕にとって思い入れがあったのは、スティーリー・ダンの「エイジャ」のアルバムジャケットでした。
真っ黒の中に、赤と白の線が縦に入っていて。
最初は気が付かなかったんですけど、それは着物か、布で、
良く見ると、そこからチラっとさよこさんの顔が見えてる、って写真だったんです。
高校生だったし、「カックイー!」って思って。
僕はベーシストなので、まあ、最近はあやしいもんですけど笑、
そのアルバムには僕の好きなベーシストの「チャック・レイニー」がベースを弾いてて、
思い入れも強かったんです。
で、随分と時は流れて、ある日、恵比寿のミルクの小部屋のドアを開けたら、
さよこさんが立ってたんです。
本当にビックリして、沢山お話ししたんですけど、ほとんど憶えてなくて笑、
後からさよこさんは「お互いに『ノイ・バウテン』が好きだ、という話とかをしたの」と言われました笑。


photo by Katsuhide Morimoto

「dance on white」で、さよこさんに参加して頂いたのは、
僕は当時「石」に惹かれていて、理由は無いんですけど、
でも、なんと言うか「石と出会うドア」みたいな「何か」に出会えずにいて、
そしたらさよこさんが「例えばトルマリンならハンズにだって売ってるのよ、まず身近に置いてしまって、後から考えなさい」って言われて。
で、石に惹かれていた時につくっていた曲達があって、
そこに数カ国後で、「石はそれぞれ自身の色をまとっていて、太陽があるから僕らはその色達を楽しめる」って朗読するアルバムにしよう、
と思った時に、日本語は当然さよこさんに読んでもらう事にしました。

ホントに何でも話して。
ある時「舞さんは原発どう思う?」って訊かれて。
「当然ノー・ニュークスだよ、人間は研究をしたがるかもしれないけど、原発は全く必要が無い」って言ったら、
「そうね!」と。
その時「どういう状況になっても自分が感じる事をやり抜こう」と約束しました。
僕は「約束」が好きでは無いので笑、僕には数少ない「約束」です。

さよこさんが突然天国へ行ってしまった時、
それは、さよこさん自らがディレクションする「さよこさんの映画」を撮る前年、という時で、
「なんて神は意地が悪いのだ(この場合の「神」は「宇宙のバランス」という意味ですけど)」と怒りかけましたが、
さよこさんと「もう決して怒らない」とも約束していたので笑、自分の演奏をし続ける、という事で、なんと言うか、耐えました。
そしたら原発が4発も爆発してしまって、その時「そうか『宇宙のバランス』は、これを、さよこさんに見せたくなかったのだな」と感じました。

さよこさんとの話はキリがないので、今回はこの辺で。


福地:
さよこさんの流れかもしれませんが
茶会記がお世話になっている生西康典さんや白尾一博君、ヴィヴィアン佐藤さん等
各位もある意味さよこさん一派ですからね。
あ またカテゴライズした笑
ヤンプさんともこうしてやりとりしているのも、なにかしらのさよこさんのアウラがあるのかもしれません

ヤンプさんチャック・レイニーファンっすか?そんな印象ないのですが 笑

ヤンプ:
マリーナ・ショウの「ストリート・ウォーキング・ウーマン」でのチャックレイニーのbassを、
是非聴いて下さい。
あの曲、イントロの会話が3〜4分あるので、意外に知らない人が多い気がします。
全員の演奏がスゴいです。

福地:
桑田圭祐さんはマリーナ・ショウを研究したと思いますね
いやはや、わたくしの頓珍漢な感想に応えてくれてありがとうございます。
なんの解説も読んでいないもので・・笑

ヤンプ:
そもそも解説なんてどこにも無いですよ笑!
こうやってアルバムを聴いて頂けてるのは嬉しいです。本当にありがとうございます。


福地:
さて、ついに新作「チュウイング」の話に移らせていただきますね
じっくりと聴かせていただきました。
今回は別段宣伝のために特化した対談特集でないので適当に聴いているわけですが
表層としては清涼感があるやはりフレッシュジュースをコテージで飲んでる気分です。


ヤンプ:
やっぱりフレッシュジュースなんですね笑!


福地:
個人的には軽井沢のコテージにいる雰囲気です。笑


ヤンプ:
沖縄から一気に笑。


福地:
下地に「yes」的な強度もあって長く聴ける耐久力を感じます。


ヤンプ:
最近、よく「強度」の話になります。
この「強度」を計れる計りや、単位や、基準はないので、言葉では難しいですが。
「強度」って大事だと感じています。


福地:
強度を担保する
贅沢で華やかなサウンドのフラグメントが重層的に挟み込まれてます。
手が込んでいます。
そこから齎される潤沢な気分は夜の車の中でもはまるかもしれません。
これはyamp koltの楽曲全体に通じることですが。
まあわたしの個人的感想ですが


ヤンプ:
嬉しいです。ありがとうございます。
スタジオも含め引っ越して、
ほぼすべて新しいシステムに変えながらの作曲、演奏、録音とミックスでした。
究極を言えば「楽しんでもらえればOK」というのは常にあるのですが、
サウンドについて言って頂けるのは、なお嬉しいですね。


福地:
さらに好みの曲は下記ですね

「ひだまり」(feat. vo. HA~HA)
「パラソル アンブレラ」(feat. vo. UA)
「Kiss & Gold」(feat. vo. 一十三十一)
「おひさまは太陽(火山島ヴァージョン)」(feat. vo. やくしまるえつこ)


この好みで私の性格がわかるのでは? 笑


ヤンプ:
え、そうですか???
あ、「何でもアリ」って事かな笑?


福地: いやどうなんでしょう (笑)
喫茶茶会記が修道院的な禁欲性を
原点に置きたいと希っているのですが
そんな立場でのyamp koltへの逆説的訴求なのです


ヤンプ:
また「おばあがホースで小太鼓」から遠のきましたね笑。

福地:
ヤンプさんは私にとっては
かなりメジャーなんですよ 笑


ヤンプ:
んんん???
ここ、掘り下げるなら、ここでの「メジャー」と「マイナー」を軽く定義して下さい笑。


福地:
そうですね 重要で メジャーとマイナーにクオリティ違いはないと思っています。
ただ発信力の違い。
メジャーもマイナーも関係なく企画の意図が入りすぎたり、
独りよがりのサークル趣味になったりすると
クオリティが落ちます。
ですのではわたしはマイナー茶房の店主ですが、プライドは持っているつもりです 笑
ですが、発信力次第でメジャーに成りえると思っています。
ですから皆関係してくれている仲間はメジャーを目指すべきだと思います。


ヤンプ:
なるほど。おっしゃりたい事は分かりました。
「定義の全部」では無いでしょうが、「発進力」がポイントで、
「メジャー」と「マイナー」と、分けた、という事ですね。
となると、逆に言えば、「発信力の有、無」であって、
「メジャーとマイナー」という事では無い、とも受け取れます。

これは、音楽で、僕が関わる人、特に、直接音楽家では無い人で、
同じ事を言う方は多い気がします。
音楽に関して言えば「音楽家個人の発信力」が「大手の音楽会社の宣伝」を上回る事はあります。

現在(この「現在」というのも全く定義出来ないものですが、ホント不思議な毎日です)、
音楽の、特に録音物に関してのフォーマットだけでも、一体何種類あるのだろう?と思うほどあります。
「細分化」という言葉では、現実が追いついていない感じです。
それをも超える「発信力」というものは、本来は、「作品そのもの」や「クオリティー」に求められるものだと思います。

で、僕に、福地さんが定義するほどの「発信力」があるか?というと、自分では大いに疑問です笑。


福地:
わたしもその嚆矢(コウシ)のひとつとしてヤンプさんと対談している訳ですね 笑
yamp koltの楽曲にメジャーなものを喚起してそれにハマりたい自分があるのです。


ヤンプ:
あ、もしかして、楽曲自体に「発信力」の可能性を感じてくれてるわけですか?


福地:
音との力にまず発信力がないとへのつっぱりにもなりませんからね
アルバムすべてにそのような力がみなぎっています


ヤンプ:
ありがとうございます。
つくった甲斐があります。

結局、究極的には「自分が聴きたい音楽」「聴いたことが無い音楽」「自分で演奏したのだけれど、自分でも何だかよく分からない音楽」に、
自分でも心が動くので、それをリリースする、つまり、自分だけではなく、まだ会ったことも無い誰かに「手放す」んだと思います。
そんな、ある種ワガママの塊のようなものを、自分以外の誰かが色んな感情で楽しんでくれる、
音楽のスンゴイ所のひとつだと思います。
結局は、音楽は個人がつくってるわけではなくて、音楽家は「フィルター」なだけだと感じています。
「フィルター」と言っても、濾したり、変化を加えるのではなく、
可能であれば「何もしない」という事です。


福地: それでいて茶会記はボーダーレスなところにも行きたいので
わたしの慣れ親しい領域とは別なところへ向かう。


ヤンプ:
って言うか、そもそもボーダーレスだと思ってましたよ笑。
だから「jazz喫茶」って言われた時は若干驚きました。
前述しましたが、ヴィンテージのバカデカいaltecのスピーカーと、
最近のB&Wが置いてあるだけで、そう思うはずです。

福地さんの「慣れ親しい領域」って、例えば何ですか?

福地:
綜合藝術的といいますか
少数派の楽器等も均等に取り扱うかのような姿勢ですね
御アルバムでいえば
伝統楽器をフューチャーした演奏強度の高い「月の木かげで鳴くでしょう」等の質感です。
これは好みの曲に入れてませんでしたよね。
綜合藝術を標榜する以上ボーダーレスなのが前提なのだけどいろいろと浮気してみたくなる バランスをとりたい自分がいる。笑
そんな自在にアジャストメントできるポテンシャルをyamp koltは持っている。
たまにはスターバックス新宿三丁目店のフレンチプレスも飲みたいじゃないですか 笑
お洒落な服を着た中流階級女子の気分になりたいものです。
わかりやすい事例で顕著なのは
やはり山口小夜子さんですよ
さよこさんはいつでもメジャーとマイナーをシームレスに横断できていた。
そのような自由な気質の文化を共有した継承者達とつるみたい私がいます。
勝手にヤンプさんを継承者にして恐縮ですが 笑


ヤンプ:
ちょっと待ってよ!
着地点がスターバックスって笑。
コーヒーは「私の隠れ家」で、美味いブラジルを飲んでよ笑!
あ、スターバックスにも「jazz喫茶」茶会記の福地さんには、お話ししたい僕の思い出話があるんだけど。。。
次回にします笑。


「月の木かげで鳴くでしょう」は、元ネーネーズの、こやまよしこ、通称よっちゃんに歌ってもらいました。
大和の音階で、琉球の歌い回しで、大和の言葉で、琉球の楽器も、世界の楽器も入れて。
この6人分の完全平行のコーラスは、僕がメロディラインを間違えてデモをつくった事に、
よっちゃんが気付いた所から産まれました。
失敗は成功の元、なわけです。よっちゃん、ありがとう。

福地:
チュウイングには、新曲新録9曲の他、過去作品から3曲
「version」が収録されているようですが?

ヤンプ:
はい。
このアルバムには「船旅」のイメージがあって、この3曲とも「船
旅」にまつわる曲だったので。

「phantom ship」(「Hanger-on-off-Kingdom」収録)
は、タイトル通り幽霊船が出てくる歌です。
で、今回は、ガムラン演奏に総取っ替えです。
直接関係があるわけではないのかも知れませんが、
バリ島で、現地のガムラン・オーケストラ「スダマニ」と、お葬式
の演奏で島を練り歩いたんです。僕は演奏的にはオマケみたいなも
んだったんですけど。
誰のお葬式かも誰も知らず笑
(バリ・ガムランの演奏家にとっては「誰が亡くなったか」より
「誰であれ、祭の、祝いの演奏をする」事が重要なのだと思います)
で、どんどん行進は続いて行って、9時間も!

で、最後に海に行くんです。燃やして遺骨を船に乗せて海に出す。
バリ島では「海の向こうは天国」と考えられているんです。
で、船に乗せて見送っている時に、正にその横で日本人の女の子達
がお葬式とも知らず海水浴して大はしゃぎで笑、
ま、そんなこんなです笑。


「She's My Baby」(「gold leaf」収録)も、二人で
船に乗る歌で、原曲はほぼ花火の中だけで歌っている、言わば「花
火ヴァージョン」なので、
良い機会だと思って「楽器で演奏したヴァージョン」をつくりました。

特筆したいのは、「おひさまは太陽」(「yes」収録)の「火山島
version」です。
実は「yes」のレコ発が2011年の4月にあり、その時に
来て下さった御客様全員にCDRで配る予定でした。
が、ご存知の通り、311が起きてしまって。
ライヴはやれましたし、皆さん来て下さったのですが、それでもさ
すがに地震の影響で来れない方も多かったんです。
このヴァージョン、かなり気に入っていて、このまま無かった感じ
になってしまうのは残念で、今回のアルバムにどうしても入れた
かったんです。
オルガンから弾き始めて、聴いてみたら、僕の勝手な妄想なんですけど、
vocalの、やくしまるえつこちゃんが
「双子で、小さな火山島に住んでいて、島の守り神の「おひさまさ
ん」に危機からの脱出を祈ってる」
みたいな、モスラ・イメージが湧いて来て笑、当時「火山島ヴァー
ジョン」というタイトルを付けました。
その後の311を考えても、今回の「船旅アルバム」を考えても
メタファー的でした。


福地:
新作のジャケットデザインには
山口さんと太鼓とホースのおばあを行き来するyamp koltの
精神が見えてきます。


ヤンプ: ジャケットの絵は、できやよいちゃんです。
素晴らしいです。感謝してます。
(できやよい の原画をフィーチャーした 「ナヒミ」のMV)



『チュウイング/ヤンプ・コルト』
http://www.cemetery-records.com/yampkolt/chewing/chewing.html



福地:
そろそろ時間終了でいきなりまとめに入りますが 笑
新作を作られた際でのなにか逸話とかがあれば
教えてもらえる範囲で御願します。

ヤンプ:
突然目頭が熱くなって来てしまいました笑。

僕は、前作「yes」まで、実はOS9で全てのレコーディングをしていました笑。
かなり信じてもらえませんが笑。
僕はOS9のままでも良かったんですけど、OS9時代のPCが、壊れたらもう直らなくなっちゃって。
で、友達のミューシャンに頼んで、バックアップのPCを作ってもらって(さかなさん、感謝してます)、
それが到着してデータを外に出したら、大元のPCが本当に壊れて笑、
もう大綱渡りでしたよ!
引越もしなきゃいけないし、システムも全取っ替え、前のデータを救出しなきゃいけないし、
その上、アナログの機材から、デジタル、しかもPC内の機材に移行でしょ(成田さん、感謝です)。
僕は自分で楽器つくったりソフト開発したりするのに、本質はアナログ人間だし、
「何年かかるだろう?」って。
でも、どの道、必要な時間だったから、沖縄への引越もベスト・タイミングだと思ってます。

毎日安定しない音場との闘いでした。ま、闘い、って言葉キライなんですけど笑。
「スタジオつくる」って「機材をそろえる」って事じゃ無くて、
「自分がそこで楽しく音楽を聴く部屋をつくる」って事なので、前半はほぼ大工さんでした。
もちろん目標は「元の新宿のスタジオよりも自分にとって新鮮な音」ですから、
「いつまでに完成」じゃなくて「出来るまで」だし笑。
突き詰めれば終わりもないし。
周りからは「一体あいつは何をやってるんだ」みたいになっちゃうし笑。
結局はアナログ機材も総取っ替えして。
これも、ホント偶然なんですけど、
僕が気に入って使って来たマイクやらアナログ機材やらを修理しなくちゃいけなくて、
でも結構マニアックな機材だったので、修理出来る人間を捜さなきゃいけなくて、
突き止めたら、ある1人の男がほぼ全ての機材のメンテ、モディファィ、輸入業務までしてて。
メールでやり取りしていたら、同じ高校の美術部の先輩後輩である事にお互いが気付いて、
当時、部室でも会っていたんです。
スゴイでしょ、世の中!(toneflakeの佐藤君にも感謝です。)

福地:
喫茶茶会記にとっても沖縄に近い方がいると嬉しいです。
わたしの実家は北海道なもんで 笑
スタジオづくりは大変そうですね?


ヤンプ:
ある意味、アルバムをレコーディングしながらじゃないと、プライベート・スタジオはつくれません。
毎日が実験なので途方にくれそうでしたが、、、
でもね、
出来たんですよ笑!
スタジオも、アルバムも!

以前の機材の90%を手放して「どうしても必要な機材」に絞ったんです。
そしたら、びっくりするほど執着が消えちゃって笑。
手放す、って良いんですね。
今のスタジオ、気に入ってます。

福地:
ヤンプさんは沖縄で様々なことを最適化されていて。・
オーバーな言い方ですが人生一つの規範の一例のような気がします。
曲の配列が南国イメージですね


ヤンプ:
スタジオは「Kupu-Land Dua」って名前にしました。
インドネシア語由来で「蝶の王国 2」「お墓の近くに生えている大きな守り木 2」っていう意味です。
「2」は、新宿のが「1」なので。

アルバムに関しては、、、

なんか、高校生の頃から、小説を書いていて笑、その為のまとまった時間はないので、移動の時に少しずつ、とか。
で、沖縄に来て、三日目に行った海が、
その小説に出てくる、つまり僕の頭の中の海とほぼ同じ海だったんです。鳥肌が立ちました。すぐに家も見つかって。
初日から沖縄の方々に漁に連れて行ってもらいました。
ウミヘビにも出会うけど笑、ウミガメにも出会えるんです。
それと、
今、「旅」という事がずっと頭にあるので、
「止まっているようでも旅の途中」とでも言うか、、、
その二つが合わさって「船の旅」という何かが、常に自分の中にあったんだと思います。
これもアルバムをリリースする時にはいつもの事ですが、
「数曲つくって、デモを自分で聴いてみて、それで自分に気付く」って事なんですけど、、、

関わってくれた音楽家や、皆さんに深く感謝しています。

とにかく、、、不思議な船旅アルバム「チュウイング」を聴いて下さい!
ヤンプ・コルト流ですが、ポップです、、、僕にとって笑。


福地:
最後になりますが
「チュウイング」と銘々された理由を教えてもらえれば・・
咀嚼を越えた享受といった・・かな?また難しくなってすいません 笑

ヤンプ:
ホントの事を言うと、思いついちゃったんです笑。

福地:
そうとも考えてました笑。

ヤンプ:
額の裏側に「チュウイング」って文字が出て来た、って感じです。
なんなんでしょうね笑?
一度、タイトルを「フナタビ」にしたんですけど、
ミックスが終って聴いてみたら、やっぱり「チュウイング」だったんです。
自分自身に「よく噛め」って言ってるのかもしれません。


福地:
ありがとうございます
自由な空気をいただいている感じがあります。
真面目に捉えると
ヤンプさんの楽曲は喫茶茶会記でも安心してかけることができます。
リクエストもしてもらいたいです。

今回は新作紹介のような形になりましたが
今後とも地味〜な 笑 付き合いさせてくださいませ〜

(終)

ヤンプ・コルト/yamp kolt

photo by Katsuhide Morimoto



音楽家。ベースを中心に様々な楽器を演奏し、作詞作曲家、プロデューサー、レコーディング・エンジニアでもある。
藤乃家舞名義も含め8枚のソロ・アルバムをリリースし、即興演奏を中心にしたライヴ活動や、
オリジナル楽器の制作(ワイヤフォン、yamp kolt SPRING)や、
MACベイスのオリジナル・レコーディング・ソフト「REX」を開発し、
UAやパードン木村らとマルチ・スピーカーを使ってのレコーディングやライヴ・パフォーマンスも行う他、
イベントのオーガナイズ、DJ、リミックスなど、多岐に渡り活動。
UA「SUN」「golden green」「ATTA」への楽曲提供とプロデュース、画家の大竹伸朗とのDVD「MOUSE ESCAPE」、
NHK制作のDVD「ドレミノテレビ」などに参加。 マーク・リボー、
"ジミ・ヘンドリックス・ジプシーズ"のジェラルド・ベレッツ、バリ・ガムランの天才集団“スダマニ”、
“ラウンジ・リザーズ”などで活躍したダギー・バウン、ロイ・ネーザンソン、カーティス・フォークスや、
内橋和久、外山明、梅津和時、大倉正之助(重要無形文化財)など、数多くのミュージシャンと共演。
映画音楽にも、エレクトリックドラゴン80000V、五条霊戦記、空中庭園、W/Oなどに参加。
山口県・YCAMでの「ジャック」(w/志賀理江子)などサウンド・インスタレーションも多数。
ジャンルを超えた活動で、米音楽誌「fader」や、米国ファッション誌「W」等にも取り上げられる。
レーベル(Cemetery Records/FAR)、イベント(サノバラウド、live FAR)主宰。
http://www.cemetery-records.com/

[ディスコグラフィー]

“藤乃家舞”:
サノバラウド(2002)
far(2004)
Hanger-on-off-Kingdom(2005)
dance on white(2007)
gold leaf(2007)

“ヤンプ・コルト” :
yes(2011)



福地史人:喫茶茶会記主宰

photo by modalbeats
様々なコンピュータ・システム関連業務に従事
ジャズ喫茶のウェブマスター等を経て
2007年5月に綜合藝術茶房喫茶茶会記を発足
http://sakaiki.modalbeats.com/
現在に至る
モトグッチ・ルマンズテンニ・オーナーズクラブオブジャパン事務局長
http://tenni.modalbeats.com/
北海道道南会 幹事
http://hokkaido-dounankai.com/